日本人のうち、『ふだんよく食べる魚介類』というアンケートに対して、4人に3人(72.5%)の人が答えた魚が「鮭」であり、『朝食で食べたい魚介類』というアンケートに対しても、「鮭」が53.0%でトップという結果が出ています。
※マルハニチロ調べ、「魚食文化に関する調査」より(2014 年 4 月)
しかし、そんな人気の魚「鮭」ですが、2とおりの読み方があるのは気になるところです。
- 「さけ(サケ)」
- 「しゃけ(シャケ)」
どちらも、普通にテレビや会話で聞こえるでしょうし、書籍などでも見かけることが出来ます。なぜ、「鮭」には2とおりの読み方があるのか?どちらか一方の読み方は間違いなのか?
この記事では、『鮭』の読み方として「さけ」が正しいのか、「しゃけ」が正しいのか、そして言い方が分かれている原因について調査しました。
地域別にみる「さけ」と「しゃけ」の読み方の使用頻度
冒頭のマルハニチロ調べのアンケートでは、『鮭』の読み方についても調査しています。
『鮭』の読み方として「しゃけ」と「さけ」のどちらを頻繁に使用しているかを調査した結果、全体として以下の割合となりました。
- 「しゃけ」・・・61.8%
- 「さけ」・・・38.2%
上記のとおり、「しゃけ」が多く使われていました。
しかし地方別で見た場合には、中部エリアでは「さけ」が49.0%、「しゃけ」は51.0%と多その差がほとんどなくなっているようです。
以下、地域別の一覧です。
表.鮭の読み方としてより頻繁に使っているもの
地域 | 「さけ」 | 「しゃけ」 |
---|---|---|
全体 | 38.2 | 61.8 |
北海道・東北 | 42.0 | 58.0 |
関東 | 33.5 | 66.5 |
中部 | 49.0 | 51.0 |
近畿 | 28.0 | 72.0 |
中国・四国・九州 | 38.5 | 61.5 |
※マルハニチロ調べ
上記の結果をみても、地域によって多少の差があるものの、実際としては「さけ」よりも「しゃけ」の方が、読み方としては優勢と考えてよいでしょう。
方言による読み方違いがあるという説
「さけ」と「しゃけ」、どちらも読み方としては正しいとして、では読み方を「さけ」と「しゃけ」で読み方をかえることの必要性や、きっかけとなる状況というものがあるのか?
これについて、よく言われているが方言説。地方によって方言の影響で読み方が違うという説です。
方言説として広まっている例としては、以下の2つが比較的有名です。
- アイヌ語の発音では、サもシャも区別があまりないため「しゃけ」と「さけ」の両方の読み方が広まったという説
- 「しゃけ」の「しゃ」の発音は江戸弁の名残であり、江戸(関東)で「しゃけ」という読み方が広まったという説
しかし、いずれも決定的な証拠・根拠が無いため、決め手に欠くという状況のようです。
ただ、江戸時代初期に刊行された『日葡辞書』には興味深い記述があるようです。
それによると、元々の言い方は「サケ」であり、『日葡辞書』にも「サケ」と書かれているとのこと。
ただし「シャケ」についても、明治時代の辞書に “サケの訛った形”として記述されていたと言われており、「しゃけ」と「さけ」の両方の読み方はかなり古くからあったようです。
「鮭」の状態によって読み方が違うという説
こちらも、「しゃけ」「さけ」の読み方違いの根拠としては、よく言われています。
こちらの場合は、単純にそう思っている人が多いため、読み方違いの根拠として話されているようです。
実際に言われている、鮭の状態による読み方の使い分けをみてみると、以下のようにまとまります。
- 食材としては「しゃけ」、魚の状態であれば「さけ」とする読み方
- 食材としても鮨や刺身であれば「さけ」とする読み方
これも、明確な線引きがなく根拠とするには非常に心もとないといえます。
状態による読み方の根拠を考察するに、食卓に上がった際に、飲む「酒」と食べる「鮭」が混じった場合にややこしくなるため、食材としての「鮭」を「しゃけ」と読み方を変えた可能性も考えられます。
「鮭」という漢字自体の読み方
「鮭」という漢字そのものについて、国語辞典には以下の記述があります。
さけ[鮭] [名]サケ
川で生まれ、大きくなると海に下って北の海で暮らす魚。
親になると、生まれた川をのぼり、たまごをうんで死ぬ。シャケ。
※例解学習国語辞典 第十版 金田一京介・編(小学館)より
上記を見ると分かりますが、「サケ(さけ)」も「シャケ(しゃけ)」も、両方とも記載されています。
辞典の記述から、「さけ」と「しゃけ」のどちらか一方が明確な誤りであるという可能性は無い、と判断できるでしょう。
結論として正しい言い方は?
ここまで調査した結果をもってしても、「さけ」と「しゃけ」がどちらが最初の読み方であるのか?ということは判断ができません。
ただし、どちらが正しい/正しくない、ということについては、前述したとおり国語辞書に「しゃけ」と「さけ」が両方記載されていること、地域ごとで「さけ」「しゃけ」の読み方違いはあれど、全体として見ればそこまで差が無い使用頻度であることから、
「さけ」と「しゃけ」はどちらも正しい読み方である
と、結論付けることが出来るでしょう。
まとめ
「さけ」と「しゃけ」の読み方の違いについて、その根拠が何にあるのか(方言説か、鮭の状態説か)を中心に調査した結果を以下にまとめました。
- 日本全体では「しゃけ」の方が使用される頻度は高い。
- 方言説として江戸弁説とアイヌ語説がある。
- 鮭の状態で読み方を使い分ける説がある(食材ならしゃけ、魚の状態ならさけ)。
- 「しゃけ」も「さけ」も国語辞典では読み方として記述がある。
- 「しゃけ」、「さけ」いずれも読み方として使用することに問題は無い。
調査の過程で、現在の日本では地域ごとに読み方の差があること、しかし「さけ」と「しゃけ」のどちらも有効な読み方として使用されていることが分かりました。
ただ、最終的な結論としては、「さけ」も「しゃけ」もどちらも正しく、誤った読み方ではないといういささか不本意な結果となってしまいましたが、この疑問に対するこれ以上の情報は、現状では無いでしょう。
本記事を最後までお読み頂き、有難うございました。
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